高齢者における運動トレーニングが好気的運動能および血液量増加機構に及ぼす影響と、それらが体温調節能に与える影響を検討した。 平成11-12年度には、高齢者では若年者と異なり、好気的運動能の増加が必ずしも血液量の増加を伴わないこと、しかし、好気的運動能の向上は、食道温の皮膚血管拡張、発汗閾値を低体温側に移動させた。また、血液量の上昇は、その増加量に応じて一定体温増加に対する皮膚血管拡張および発汗量の感受性を冗進させることを明らかにした そこで、平成13年度は、1)何故高齢者では若年者と異なり、好気的運動能の増加が血液量の増加を伴わないのか、さらに、2)好気的運動能の増加が食道温の皮膚血管拡張、発汗閾値を増加させるメカニズムについて検討した。まず1)の原因として、運動負荷に対する血漿アルプミン合成の個人差があることが予想できる。そこで、運動負荷後の血漿中アルプミン含有量を測定し、若年者の場合と比較する。まず、若年者での実験方法を確立し、運動直後の蛋白の経口投与を行った群では血漿蛋白質量の増加がおきることを明らかにした。今後、この方法を高齢者に用い仮説の検討を行う予定である。2)については、好気的運動能の増加は同じ絶対運動強度でも、相対運動強度を低下させ、それに伴って運動時の血液量の低下、血漿浸透圧、血漿乳酸濃度、血液量の低下、さらに交感神経活動が抑制されることが、知られている。そこで、発汗、皮膚血管拡張の食道温閾値変化に対するこれらの血液成分の変化が与える影響をまず若年者で検討した。その結果、これらの食道温閾値は、絶対運動強度、血漿浸透圧よりも、相対運動強度、乳酸閾値、交感神経活動と相関することが明らかとなった。このことは、高齢者のトレーニングにより皮膚血管拡張の低下は、最大酸素摂取量増加に伴う相対運動強度の低下に起因することを示唆する。
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