概日時計の分子機構:遺伝子発現から行動リズムまで

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11470018
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 岡村 均 神戸大学, 医学部, 教授 (60158813)
• 研究分担者: 山口 瞬 神戸大学, 医学部, 助手 (70304087)
• キーワード: 哺乳類時計遺伝子 / サーカディアンリズム / Cry / ノックアウトマウス / ルシフェラーゼ / 単一細胞のリズム

研究概要

従来解析が困難であった生命現象の時間軸に沿った研究分野を切り開く事を目的とし、以下の三つの事項を行った。 1)時計遺伝子の発現制御に関する研究 マウスゲノムライブラリーより、mPer1遺伝子のプロモーター領域を含む約30kbpのゲノムを単離した。この領域には、24時間周期の遺伝子発現に重要であると考えられているE-box配列(CACGTG)や、光による発現誘導に必要とされるcAMP応答配列(TGACGTCA)、AP-1配列(TGANTMA)などが多数存在することを明らかにした。さらに、mPer,mTimは細胞および組織特異的時間特異的発現が知られており、蛍光観察倒立顕微鏡システムを用いて、mPER1の発現解析を行った。mPER1は視交叉上核で夕方にピークのある発現を示し、朝にはなにも発現していなかった。 2)高感度フォトニクス・デヴァイスを利用したリアルタイムリズムモニター系の開発に関する研究 次に、翻訳開始コドンより上流約7.2kbpのゲノムDNAをルシフェラーゼ遺伝子とつなぎ、GH3細胞に導入し、各種条件でプロモーター活性が変動することを示すことを明らかにした。単一細胞レベルでリズムをリアルタイムモニターできる超高感度微量光検出装置を用いたアッセイ系を開発し、ルシフェラーゼ活性が24時間周期に変動するものも見つけた。しかし、他のリズムを示すものも多く、もっと時計現象を描出できるセルラインの開発が必要と考えた。 3)時計遺伝子のノックアウトマウスに関する研究 時計遺伝子Cryのノックアウトマウスを用いて、視交叉上核と肝臓で、全くリズムが消失していることを発見した。

研究成果

• [文献書誌] Okamura,H.,et al.: "Pnotic induction of mPer1 and mPer2 in Cry-deficient mice lacking a biological clock"Science. 286. 2531-2534 (1999)
• [文献書誌] Maebayashi,Y.,et al.: "A putative transcription factor with seven zinc-finger motif identified in the developing suprachiasmaticnucleus by the defferential display-PCR mithod"J.Neurosci.. 10176-10183 (1999)
• [文献書誌] Ibata,Y.,et al.: "Functional morphology of the suprachiasmatic nucleus"Front.Neuroendocrinol.. 20. 241-268 (1999)
• [文献書誌] Yan,L.,et al.: "Per1 and Per2 gene expression in the rat suprachiasmatic nucleus:circadian profile and the compartment-specific response to light"Neuroscience.. 94. 141-150 (1999)
• [文献書誌] Takumi,T.,et al.: "A mammmalian orthologue of Drosophila timeless,highly expressed in SCN and retina,forms a compley with mPER1."Genes Cells.. 4. 67-75 (1999)
• [文献書誌] 岡村均、重吉康史: "生物時計の分子機構"細胞工学. 18. 698-707 (1999)
• [文献書誌] 西塚泰美、貝淵弘三、丸山敬: "細胞のシグナリングSelectde Reviews"中山書店. 399 (1999)
• [文献書誌] 海老原史樹文、深田吉孝: "生物時計の分子生物学"シュプリンガー・フェアラーク東京. 201 (1999)