研究概要 |
1 自由行動・意識下ラットの視床下部室傍核(PVN)から単一神経活動記録:PVNは神経内分泌と共に自律神経系調節に関わり、内部恒常性維持に重要な役割を行っている。これまでこのPVNの働きについて主に麻酔下動物実験で検討されてきたが、手術/麻酔は自律神経や内分泌応答に多大の影響を与える。さらに調節性行動(飲水行動など)時の神経活動の評価は出来ない。そこで記録電極、微小電極ホルダーマニピュレーターに加良を加え、効率よく安定した単一ニューロン活動の記録が可能となった。現在次の項目について検討している。(1)自発発火パターンの解析、(2)循環系圧受容器からの入力様式、(3)環境ストレス応答、(4)高張食塩水負荷/脱水効果、(5)神経ペプチド作用など。 2 脳スライス実験:高張食塩水並びにマニトール液に対するPVNニューロンの応答性をパッチクランプ法で検討した。電気生理学的に大細胞(タイプ1)と小細胞(タイプ2)ニューロンを同定し、高張食塩水(15,30,60mM)に対する膜電位と電流を夫々current clamp、voltage clamp法で測定した。タイプ1,2ニューロン共に高張食塩水に対して濃度依存的に脱分極と内向き電流を示したが、タイプ1の方が反応は大きかった。また浸透圧的には高張食塩水(30mM)とほぼ同等のマニトール液(60mM)に対する反応は高張食塩水のそれより小さかった。これは浸透圧よりNaCl自体が有効刺激であることを示唆している。次にテトロドトキシン(TTX)存在下で高張食塩水を与えても同様な反応が観察されたので、この変化はシナプス性ではなく、主に直接作用と考えられる。また先の我々のin vivo microdialysis実験で高張食塩水局所灌流による心血管反応にグルタミン酸が関わっており、そのレセプターとしてはnon-NMDAでなくNMDAレセプターの関与を明らかにした。そこでこの点をスライス実験で調べた。Non-NMDAアンタゴニストであるCNQXにより高張食塩水の反応は有意に抑制された。一方、NMDAアンタゴニストであるMK-801同時投与実験は目下施行中である。
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