プロスタノイドは、生体内において多彩な作用を示す生理活性脂質であり、循環器系での作用も多数報告されてきた。しかし、プロスタノィドの循環器系における役割の詳細に関し、不明な点が多く残されている。そこで本研究は、その役割解明を目指した。まず、研究を推進するために必須となる、マウスを用いた解析系の確立を行った。それらには、in vivo解析系として、横行大動脈狭窄による心肥大モデル、冠動脈左前下行枝結紮による急性心筋梗塞・心臓リモデリング、総頚動脈結紮による血管内膜肥厚モデル、アラキドン酸致死モデル、腎動脈狭窄による腎血管性高血圧などが含まれる。また、in vitro解析系として、マウス胎仔・成獣の心筋培養系、大動脈平滑筋培養系、摘出潅流心臓解析系、血小板凝集解析系、血管張力解析系などを確立した。ついで、これらの解析系を用い、種々の病態モデルにおけるプロスタノイドの役割を、その受容体欠損マウスを用いて解析した。その結果、プロスタグランジンI_2が、虚血・再潅流障害において心筋保護作用を示すことや、プロスタグランジンE_2が、血小板機能調節を介して生理的止血や病理的血栓形成に重要な役割を果たすことを解明し報告した。また、心肥大、血管内膜肥厚、血管平滑筋の増殖・肥大、血圧調節などにおける、プロスタノイドの新たな役割が解明されつつある。これらの成果は、プロスタノイドが循環器系ではたす役割を明らかにするとともに、種々の病態をターゲットとする薬物の開発に貢献するものと期待される。
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