平成12年度には、リアノジン受容体、ミツグミン29、ジャンクトフィリンに関する研究が遂行され、それぞれ数遍の論文発表がなされた。その中で特記すべきジャンクトフィリンに関する研究成果を以下に記載する。 細胞表層膜とCa^<2+>ストア膜が近接する結合膜構造の分子構築の理解を目指した研究で、ミツグミン72(MG72)と命名した新規膜蛋白を発見した。MG72は骨格筋では三つ組構造に局在し、C末端に1本の膜貫通セグメントを有し、細胞質に位置するN末端側には14アミノ酸よりなる繰り返し配列(MORNモチーフと命名)が8回現れる。両生類初期胚での実験で、MG72の発現により細胞表層膜と細胞内小胞体膜の結合膜構造の形成が観察された。異なる遺伝子から由来する3種のMG72サブタイプの存在が明らかになり、これらをジャンクトフィリン(JP)ファミリーと命名した。骨格筋細胞は1と2型、心筋と平滑筋細胞は2型、神経細胞は3型のJPサブタイプを発現している。心臓に発現する2型JP(JP-2)を欠損するマウスは、受精後9.5日には心臓拍動の減弱が確認され、その翌日頃には心停止する。その心筋細胞では結合膜構造であるperipheral couplingの形成が極端に減少しており、時期的にも部位的にも同調性のないランダムCa^<2+>トランジェントを示していた。これらの結果から、JPは結合膜の分子構築に寄与しており、その形成不良はCa^<2+>シグナリングに異常をきたすことが示された。
|