研究概要 |
筋小胞体からのCa^<2+>遊離はCa^<2+>による細胞内情報伝達の枢要な過程である。我々は既に小胞体内腔のCa^<2+>結合部位量(Ca^<2+>-buffer site)を評価し、そのCa^<2+>遊離に及ぼす影響について報告した。この結論を小胞体内腔の[Ca^<2+>]濃度変化を直接測定することにより確認することを計画した。小胞体内腔Ca^<2+>濃度は10mMにも達することが予想されるので、Ca^<2+>親和性の低いCa^<2+>指示薬を選定しなければならない。幸いFluo-3のほかにCa^<2+>親和性がもっと低いFluo-4,Fluo-5など種々の蛍光性指示薬が市販されるようになったので、現在検討中である。一方Ca^<2+>によるCa^<2+>遊離は重要なCa^<2+>遊離機構の一つと考えられ、アデニンヌクレオチドにより促進され、Mg^<2+>により抑制されることが知られているが、この定量的検討が不十分であった。そこで、種々の濃度のCa^<2+>,Mg^<2+>存在下でのCa^<2+>放出チャネル活性を測定し、定量的考察を行った。Ca^<2+>放出チャネルには高親和性Ca^<2+>活性化部位(A-site)と低親和性Ca^<2+>不活性化部位(I-site)とが存在し、Mg^<2+>は前者にはCa^<2+>の競合的拮抗薬として、後者にはアゴニストとして働くこと、各部位のCa^<2+>,Mg^<2+>親和性は精製リアノジン受容体より筋小胞体中のCa^<2+>放出チャネルの方が約5倍強いこと、ATPは各部位のCa^<2+>,Mg^<2+>親和性を変えず、最大活性を濃度依存的に数百倍まで増加すること、カフェインはA-siteのCa^<2+>親和性のみ増加し、I-siteのCa^<2+>,Mg^<2+>親和性を殆ど変えないこと、また最大活性を増すことなどが判った。以上の結果から骨格筋ではCa^<2+>誘発性Ca^<2+>遊離が生理的な脱分極によるCa^<2+>遊離には関与しないことが結論された。またmisugumin29欠損マウス骨格筋は正常骨格筋と比較し、extrajunctional ryanodine receptorが検出されないのに脱分極感受性Ca^<2+>ストアーとカフェイン感受性Ca^<2+>ストアーとが合致しないことがわかり、形態的にも機能的にもコンパートメントが存在することがわかった。なお正常筋では単一均質な空間と考えられた。
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