研究概要 |
筋小胞体からのCa^<2+>遊離はCa^<2+>による細胞内情報伝達の枢要な過程である。小胞体内腔のCa^<2+>含量のCa^<2+>放出過程への影響を考察する場合、Ca^<2+>放出チャンネルの性質が均一であることの確認が重要である。ウシガエル骨格筋にはα-RyRとβ-RyRと呼ばれる二種類のリアノジン受容体(RyR)アイソフォームがほぼ等量ずつ混在することが知られている。我々は既にこれらのアイソフォームはそれぞれ哺乳類のRyR1、RyR3と相同であり、精製アイソフォームのCa^<2+>誘発性Ca^<2+>遊離(CICR)活性は区別できないほど酷似していることを報告してきた。しかし筋小胞体膜上に存在しているRyRチャンネルはFKBP12、triadin,calsequestrinなどとも相互作用しているので、このようなnativeな状態のRyRの性質については検討が必要である。開口状態のRyRにのみ[^3H]ryanodineは結合し、一旦結合した[^3H]ryanodineは4℃では不可逆的であり、解離しない性質を利用して、筋小胞体膜上のα-RyR、β-RyRのCICR活性を調べた。筋小胞体膜と[^3H]ryanodineを常温でその結合が定常状態になるまでインキュベートした後、4℃に冷却し、大量の非標識ryanodineを加えて[^3H]ryanodineの結合を止めた後、CHAPSを加えて可溶化した。免疫沈殿法を用いてα-,β-RyRを分離し、それぞれの活性を調べた。その結果は(1)α-RyRのCICR活性のCa^<2+>感受性、ATP感受性、カフェイン感受性はβ-RyRのそれと区別できなかった。(2)しかし最大CICR活性はα-RyRはβ-RyRの数%にすぎなかった。(3)これはα-RyRの最大活性が抑制されているためであり、silentなα-RyRの存在によるのではない。以上の結果は生筋でのCICR活性は主にβ-RyRによることを示唆する。 また小腔体内腔Ca^<2+>が枯渇すると形質膜を介するCa^<2+>流入(ストアー作動性Ca^<2+>流入)が増加することが平滑筋や非筋細胞で報告されており、IP3受容体が深く関わっていると考えられている。Ca^<2+> homeostasisへのIP3受容体の関与が殆どない骨格筋でもストアー作動性Ca^<2+>流入が起こるかどうかを検討した。はじめCa^<2+>除去Krebs液中に反復high K^+溶液で収縮させ、次にSERCA阻害薬存在下に同様の反復high K^+収縮を行わせると、攣縮刺激、high K^+刺激、caffeine刺激にも反応しない状態にまで枯渇出来た。この状態ではCa^<2+>流入、Mn^<2+>流入の増加が見られ、その性質はCRACチャンネルと多くの点で酷似していた。
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