研究概要 |
内皮細胞とその基底膜成分の一つであるラミニン10,11との結合にジストログリカンが関与していることを見出した。また、この結合がカルシウム依存性であり結合の阻害物質としてヘパリンを見出した。(J.Biol.Chem.274,11995-12000,1999)。さらに、血管新生時におけるラミニン-ジストログリカン系の関与について解析を進めた。血管新生時の内皮細胞の動態として遊走、増殖、管腔形成が誘発される事が知られている。これらの内皮細胞の反応においてラミニン-ジストログリカン系は、遊走、増殖、管腔形成を阻害することを新たに見出した。また、ジストログリカンの引き起こすこれらの反応はジストログリカンの細胞内領域が必要であることを見出した。このことから、ジストログリカンを介して何らかの信号伝達系路があることを指摘することが出来た。内皮細胞のジストログリカンの発現調節機構を解析したところ、ジストログリカンの発現は細胞周期に依存しており、休止期には発現は低レベルに押さえられているが増殖期には発現が更新することを見出した。また組織学的な解析を行ったところ、正常な動脈、静脈の内皮細胞でのジストログリカンの発現は低いが、一方ガン組織へ進入してくる新生血管の内皮細胞ではジストログリカンは高度に発現していることを見出した。これらのことから、ラミニン-ジストログリカン系の内皮細胞の機能として血管新生の制御をしていることを明らかにした。
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