血管新生時におけるジストログリカンの関与を検討した。生体内では、通常の血管内皮細胞には静脈、動脈ともジストログリカンの発現は低いが、癌組織における新生血管内皮細胞では高発現していることを見いだした。また、培養血管内皮細胞の接着、遊走、増殖、管腔形成を制御していること、この活性には細胞内領域が必要であることを示した。このことはジストログリカンを介した信号伝達経路が存在することそ示唆している。(J cell.Biol.投稿中)ジストログリカンの細胞内情報伝達経路を解析する目的で結合タンパク質の探索を行い、MAGI-1を見いだした。MAGI-1は2つのWW領域と5つのPDZ領域をもつ。このうちWW領域でジストログリカン細胞内ドメインのPYモチーフと結合することを示した。 MAGI-1はアダプター蛋白であるためMAGI-1に結合する機能蛋白を探索したところ、MAGI-1の5つめのPDZ領域にbeta cateninが結合することを示した。さらにMAGI-1はbeta cateninと結合してbeta cateninの分解を阻害していること、beta catenin依存的なTCF/LEF1経路の活性化を行っていることを見いだした。このMAGI-1-beta catenin複合体が筋ジストロフィー症患者の再生筋繊維で活性化されていることを発見した。(Nature投稿中)このことはジストログリカン-MAGI-1-beta catenin複合体が骨格筋細胞のホメオスタシスに関与することを示唆するものである。
|