研究概要 |
血管新生におけるジストログリカンの関与を検討した。内皮細胞とその基底膜成分の一つであるラミニン10,11との結合にジストログリカンが関与していることを見いだした。また、この結合がカルシウム依存性であり結合の阻害物質としてヘパリンを見いだした。血管新生時の内皮細胞の動態として遊走、増殖、管腔形成が生じる事が知られている。これらの内皮細胞の挙動においてラミニンージストログリカン系は、遊走、増殖、管腔形成の全てを阻害することを見いだした。また、これらの制御機構には、ジストログリカンの細胞内領域が必要であることを見いだした。内皮細胞のジストログリカンの発現調節機構を解析したところ、その発現は細胞周期に依存しており、休止期には発現は低レベルに押さえられているが増殖期には発現が亢進することを見いだした。また、組織学的な解析を行ったところ、正常動脈、静脈の内皮細胞でのジストログリカンの発現はほとんど認められないが、ガン組織へ進入してくる新生血管の内皮細胞ではジストログリカンは顕著に発現していることを見いだした。ジストログリカンの細胞内情報伝達経路を解析する目的で結合タンパク質の探索を行い、MAGI-1を見いだした。MAGI-1は2つのWW領域と5つのPDZ領域をもつ。このうちWW領域でジストログリカン細胞内ドメインのPYモチーフと結合することを示した。MAGI-1はアダプター蛋白であるためMAGI-1に結合する機能蛋白を探索したところ、MAGI-1の5つめのPDZ領域にbeta cateninが結合することを示した。さらにMAGI-1はbeta cateninと結合してbeta cateninの分解を阻害していること、beta catenin依存的なTCF/LEF1経路の活性化を行っていることを見いだした。
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