マイス第7染色体上のZfp127/Snrpn領域とマウス第17染色体上のIgf2r領域の発現アレル/非発現アレル間のクロマチン凝縮度の違いを測定した。マウス正常肝より得られた細胞核を超音波破砕後、ショ糖密度勾配を用いて遠心し、ヘテロクロマチンまたはユウクロマチンに富む分画に分けた後、アレル特異的凝縮度を比較検討した。F1マウス(C57BL/6×MSM)とその逆交配F1マウス(MSM×C57BL/6)の両マウスでIgf2r領域の非転写アレルは転写アレルに比べクロマチン凝縮度は高かった。この結果は、ゲノムインプリンティング機構と両アレル間のクロマチン凝縮度の違いに強い関係があることを示している。一方、Zfp127/Snrpn領域では、F1マウス(C57BL/6×MSM)ではIgf2r領域の場合と同様に、非転写アレルは転写アレルに比べ、クロマチン凝縮度は高かったが、その逆交配F1マウス(MSMXC57BL/6)では両アレル間凝縮度に差を認めなかった。この領域についてのコンジェニックマウスでも逆交配F1マウスではやはり両アレル間でクロマチン凝縮度に差を認めなかった。以上の結果は、germ lineを通じて受け継がれるBlueprintによって、ゲノムインプリンティング領域を構成するドメインのクロマチン凝縮度の違いが生じ、安定に維持されていることを示している。クロマチン凝縮測定法(H/Eアッセイ法)を用い、13年度はRit1がん抑制遺伝子領域の染色体凝縮度を検討した。マウス放射線誘発胸腺リンパ腫でRit1遺伝子のエクソン2とエクソン3の領域に高頻度のHomozygous deletionを示す。そこで、BALB/cマウスの胸腺、脳および肝臓からヘテロおよびユウクロマチンを分画し、Rit1近傍領域のクロマチン凝縮度を調べた。胸腺および脳では、Rit1近傍から広範囲にわたってユウクロマチン優位のゆるい濃縮度を示したが、肝臓ではRit1近傍はユウクロマチン優位であり、内部欠失領域から離れるに従ってヘテロクロマチン優位のつよい凝縮度を示した。この結果から、臓器特異的な発現と染色体凝縮度との関連性が示唆された。
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