1.Chk1ノックアウトマウスの作製と解析 Chk1ヘテロ(Chk1^<+/->)マウスは見かけ上明らかな異常を認めなかったが、Chk1^<-/->マウスは胎生7.5日(E7.5)以前に致死であることがわかった。E3.5の桑実胚の解析から、胚内部の増殖の盛んな細胞に凝集して断片化した多数の微小核を認めた。また、Chk1^<-/->胚における細胞死の少なくとも一部はアポトーシスによるものであると思われた。Chk1^<+/+>あるいはChk1^<+/->胚においてはX線や紫外線、あるいはアフィディコリン処理によりMI値が大きく減少した。しかしながら、Chk1^<-/->胚ではMI値は未処理のものと同程度であった。これらの知見は、Chk1^<-/->胚においては、DNA傷害や複製阻害に反応したG2期での細胞周期停止機構が完全に損なわれており、Chk1がG2チェックポイント制御に必須な遺伝子であることを示していると考えられた。 2.Cds1(Chk2)ノックアウトマウスの作製と解析 Cds1(Chk2)ノックアウトマウスの胎生期での死亡は認められず、見かけ上明らかな異常を認めなかった。さらに、MEF細胞の解析からCds1(Chk2)-/-細胞はDNA傷害あるいは複製阻害に反応したG2期停止にほとんど異常を認めなかった。しかしながら、DNA傷害に反応したp53タンパク質の安定化と、それにともなうアポトーシス誘導が損なわれていた。これらの知見から、細胞内においてp53を介してアポトーシスを制御するキナーゼであると考えられた。
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