研究概要 |
三重鎖DNAは、二重鎖DNAに一本鎖DNAが結合したもので近年、生体のなかでの遺伝子発現抑制・遺伝子組換え反応などに関与し、生物学的に重要な役割を果たしている可能性が指摘されてきた。更に、応用面においても、アンチジーン法として、遺伝子治療の部門で大きな注目を集めてきている。我々はこれまでに、この三重鎖DNAに結合する転写因子を世界に先駆けて遺伝子クローニングし、その遺伝子構造を明らかにしてきた。更に、三重鎖形成を簡便かつ定量的に研究する新しい手法としてfilter binding法、カロリメトリー法を確立し、三重鎖形成において、これまでに知られていなかった新しいメカニズムが存在する事を明らかにしてきた。これらの結果をふまえ、本プロジェクトでは、MAZのDNA分子識別を分子レベルで解析し、更にコアクチベーターp300/CBPとの結合、及び、ヒストン、アセチルトランスクフェラーゼ活性に及ぼす影響を通じて、MAZの生理機能を体系的に解析し、更に改変MAZを用いた新規蛋白質をデザインして、新しい機能性核酸の遺伝子治療への応用をめざす。MAZの遺伝子構造をプロモーター構造を中心に解析し、ハウスキーピング遺伝子の発現抑制に係わるMAZとSp1の役割を明らかにした。共に共通のGCリッチエレメントに結合し、互いに独立に作用してハウスキーピング遺伝子を負に抑制する事が明らかとなった。更に、MAZとSp1のzinc fingerモチーフは互換性があり、各々を入れかえたキメラMAZ/Sp1分子も同様の機能を果たす事が明らかになった。またMAZは負の抑制においてはSp1はDnmt1とMAZはHDAC1,2,3と複合体を形成する事、正の制御ではMAZはp300と会合する事を明らかにした。P300は転写のコアクチベーター及びインテグレーターと呼ばれており、ヒストンをアセチル化する活性を有している。 今後、HDAC1,2,3とp300の相互作用について、どの様な状況下でどの様な制御が行なわれているかの分子ネットワークに焦点を当てて解析をしてゆく。更に、Sp1のF2とF3はMAZのF4とF3と同様の構造を有する事よりこれらのzinc fingerを利用したミニマムzinc fingerを作成した。これを用いてp300のHATやHDAC1,2,3のHDACドメインを融合した新しいDNA結合転写因子を作成し、そのハウスキーピング遺伝子の治療に使用したい。
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