我々は、1994年に遺伝性神経変性疾患Machado-Josephe病(MJD)の原因遺伝子(MJDl)を世界に先駆けて同定し、MJD1遺伝子内のCAGリピートの異常伸長がMJD発症の原因であることを明らかにした。本研究は、同定したMJD1遺伝子をもちいてMJDの発症機構を明らかにすることを目的とし、本年度は以下の成果を得た。 (1)ポリグルタミンの核内細胞死シグナル励起部位としてのPML bodyの同定。 ポリグルタミンが細胞死を誘導するときに核内で凝集しSEK1-JNKの細胞死シグナルを活性・伝達している部位がPML bodyであることを明らかにした。PML bodyは、以前に我々が急性前骨髄球性白血病(APL)の原因となるPML-RARの細胞内標的部位として同定した核内のサブドメインであり、また、近年報告されたPml遺伝子のノックアウトの解析から、PML or PML bodyは、UV、インターフェロン、TNF、Fas、セラミド等が引き起こす細胞死に極めて重要な役割を果たすことが示されている。これらの結果から、PML bodyは細胞死シグナルを伝達する重要な場となっている可能性が考えられた。 (2)ドロソフィラの遺伝学を用いたポリグルタミンが誘導する細胞死に関わる遺伝子群の検索。 ポリグルタミンを複眼特異的に発現するトランスジェニックフライと染色体の種々の領域に欠損をもつ変異体と交配し、欠失により表現型(rough eyes)を憎悪または抑制する10数箇所の染色体領域を同定した。
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