研究分担者 |
高橋 和宏 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (80241628)
森谷 卓也 東北大学, 医学部・附属病院, 助教授 (00230160)
鈴木 貴 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (10261629)
原田 信広 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (00189705)
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研究概要 |
我々は生物学的活性の高いestradiol(E1)と低いestorone(E2)との相互転換に関与する17β-HSD1型、2型の発現、活性をヒト乳癌由来の培養細胞株であるT-47DならびにMCF-7、ヒト子宮内膜癌由来の培養細胞株RL95-2を含む種々の培養細胞株で検討した。T47D細胞では発現、活性共に17β-HSD1型が、RL95-2細胞では逆に17β-HSD2型が認められることを明らかにした。又実際のヒト乳癌(178例)、子宮内膜癌(102例)でも同様の傾向が見られる事を確認した。これらの結果から同じ性ステロイド依存性腫瘍であっても乳癌細胞と内膜癌細胞とではエストロゲン代謝動態が異なる事が示された。更にこれらの酵素の発現、活性がレチノイド、プロゲステロンが制御している事を明らかにした。そこでレチノイドの受容体であるRXRα、β、γ、RARα、β、γ,プロゲステロンの受容体であるPRA, PRBの発現動態を子宮内膜及び乳腺の病変に関して検討し、レチノイド及びプロゲステロンは実際のヒト子宮内膜癌、乳癌における腫瘍内のエストロゲン産生代謝動態においても重要な役割を果たしている事が考えられた。更に我々は腫瘍局所での性ステロイドの代謝動態を検討する為に、不活型ステロイドであるestrone sulfate(ES)をE1に変換するsteroid sulfatase (STS), E1をESに代謝するestrone sulfotransferase (EST)、testosterone(T)をより強力なandrogen(A)活性を有する5α-dihydrotestosterone(DHT)に変換する5α-reductase(RT)を乳癌症例で検討した。STS陽性乳癌は腫瘍径が大きい傾向があり、有為に再発しやすい傾向がみられた。一方ESTは多変量解析の結果、ESTはリンパ節転移とともに独立した予後因子であることが明らかとなった。これらの事から、ヒト浸潤性乳管癌ではestrogen供給がSTSやESTによって制御されており、両者は乳癌の再発予後に関する重要な因子であることが示唆された。一方5α-RT1及び2は各々58%,15%の症例において癌細胞質に陽性像を認め、ヒト浸潤性乳管癌では5α-RT1が多くの症例で癌細胞に発現し、局所におけるDHTの産生や作用に関与していると考えられた。
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