研究概要 |
最近、腫瘍免疫における腫瘍の免疫逃避機構の一部として、FasLに結合するDcR3(decoy receptor 3)が発見されている。DcR3はFasLに結合しFasLを介するアポトーシスの系を抑制すると考えられている。この機構をウイルスが腫瘍を発生させる上で関連している可能性がないか、HTLV-IおよびEBV(Epstein-Barr virus)ウイルス関連リンパ腫で検索した。7例のATLL(adult T-cell leukemia/lymphoma),17例のEBV関連リンパ腫(NK cell lymphoma 10例、pyothorax-associated B-cell lymphoma,PAL7例)にて、DcR3の遺伝子増幅、発現を検索したところ、ATLLではDcR3の遺伝子増幅、発現が見られた。またEBV関連リンパ腫でもDcR3の遺伝子増幅、発現が見られた。一方コントロールと使用した反応性リンパ節、およびウイルスの関与していないB細胞性リンパ腫では、DcR3の遺伝子増幅、発現はほとんど見られなかった。以上のことより、HTLV-IおよびEBVは、リンパ腫発生の過程で、腫瘍の免疫逃避機構の一部として、FasLに結合するDcR3(decoy receptor 3)を使用している可能性が考えられた。 (Ohshima K,Haraoka S,Sugihara M,Suzumiya J,Kawasaki C,Kanda M,Kikuchi M.Amplification and expression of adecoy receptor for Fas ligand(DcR3)in virus(EBV or HTLV-I)associated lymphomas.Cancer Letter,160,89-97,2000)
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