研究概要 |
マウス肺発癌耐性遺伝子Par2は、過去の連鎖解析により第18染色体のD18Mit123遺伝子座とD18Mit4遺伝子座に挟まれた約10cMの領域に存在することが確実視されている。同遺伝子のクローニングに必須な高精度マッピングを遂行するためには、Par2の劣性アレル(発癌抑制作用なし)を有するC57BL/6(B6)の当該10cM領域をPar2の優性アレル(発癌抑制作用あり)を有するBALBへ移入したBALB-based Par2interval-specific congenic mouse(以下、コンジェニックマウス)を作製する必要がある。その方法として、まずBALB雄とB6雌のF_1を作製し、次にF_1雄をBALB雌に戻し交配する。生まれた初代戻し交配マウス、すなわちN_2の雄10匹程度の耳よりDNAを抽出し、D18Mit123,D18Mit4及びそれらに挟まれた多型マイクロサテライト遺伝子座の遺伝子型をpolymerase chain reaction(PCR)法により決定し、Par2を含む10cM全域においてheterozygousな個体を選択する。選択されたN_2雄をBALB雌へさらに戻し交配し、N_3を得る。N_2の際と同様の選択をN_3雄について行い、選択されたN_3雄をBALB雌へ戻し交配する。以下、同様の選択、戻し交配を繰り返す。N_<10>を得た時点で、Par2の10cM領域においてheterozygousnasな雌雄の個体を選択し、兄妹交配を行う。生まれた固体より、Par2領域がB6に関してhomozygousな雌雄を選択して兄妹交配し、目的のコンジェニックマウスを樹立する。 本年度は、昨年度に引き続き、コンジェニックマウスの作製を進めた。現在N_8-N_9の段階にあり、当初の計画通り、樹立は間もなく達成される。高マウスは、Par2の劣性アレルを有すること以外、遺伝的にほぼBALBと同一である。よって、Par2の高精度マッピングのみならず、同遺伝子の生物機能を解析する目的の極めて有用である。
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