1.ENU投与時期をマウス妊娠8日、10日、12日、19日、生後5日、生後30日の6群に分け、投与後6ヶ月観察した。妊娠8日から19日までの投与群のp53ヌル仔マウスの大脳に膠芽腫が認められた。投与時期との関係では妊娠12日に発生のピークがあり、p53ヌルの70%に大脳膠芽腫が認められたが、他の投与群ではその頻度は著しく減少していた。これに対し、生後5日ENU投与群では小脳髄芽腫が40%のp53ヌルに発生し、他の組織型の脳腫瘍は認められなかった。また、生後30日投与群では脳腫瘍の発生は見られなかった。2.胎生12日と生後5日のマウス脳で、発生段階と増殖能、ENU投与によるアポトーシス(アポ)を検索した。胎生12日の野生型胎児では大脳皮質にアポを示す細胞が認められ、これは投与後16時間をピークに48時間後まで認められた。この傾向は数的に減少は見られるもののp53ヘテロにも同様に認められたが、p53ヌルにはENU投与後アポを示す細胞は見られなかった。生後5日ではENU投与によりアポに陥る細胞は野生型の小脳外顆粒層に限局し、その時間分布は胎生12日と同様であった。p53ヌルには小脳外顆粒層のアポは観察されなかった。また、BrdUを用いた増殖能の検討の結果、胎生12日、生後5日のマウス脳ではアポを示す部位とBrdU取り込みのある部位とが一致した。3.経胎盤ENU投与によるマウス胎児脳での初期遺伝子変化を解析する目的で、胎生12日にENUを母マウスに投与した後24時間でp53-/-;+/+胎児脳(大脳皮質)を取り出しRNAを抽出しDifferential display法に供した。これまで、約20のクローンを得、これらはマウス初期発生に関与する遺伝子が大部分であったが、中には未知の遺伝子も含まれていた。現在cDNAの全長の同定を行っている。
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