研究概要 |
1 肝炎、肝癌発症に関する動物実験 (1)全長ウイルス遺伝子を導入したALB-HN2(アルブミンエンハンサー・プロモーター制御)とME-HN2(SRαプロモーター制御)のラインから、A44,A39,A48,M2,M5の5ラインについて凍結胚を融解し、飼育繁殖した。1ラインにつき雄20雌20の個体を確保し、導入遺伝子陰性のコントロール群として、A44,A48,M2の3ライン作出時における同腹個体を、各雄20雌20準備した。 (2)免疫系移入用のマウスを作製するために、同系マウスにC型肝炎ウイルス、各種リコンビナントウイルス抗原を免疫し、免疫系の誘導を確認した。免疫系については、エピトープ解析、生物活性測定を行った。 2 トランスジェニックマウスの解析 まず、ウイルス蛋白質発現だけで肝炎、肝癌の発症をみることができるか、上記観察個体を定期的に1年、2年で屠殺し、各臓器についてウイルスmRNA、ウイルス抗原、肝炎肝癌の有無を検索した。ラインA44は、導入遺伝子のメチル化を脱メチル化剤5-アザシチジン投与により解除すると、発現誘導を起こしやすいラインであった。脱メチル化剤を投与せずに自然発現誘導を観察したところ、1年齢22個体では観察できなかったが、2年齢16個体では12個体の肝臓に発現を認めた。これらのうち2例にのみ高度のリンパ球浸潤を観察したが、他の10例は導入遺伝子陰性コントロール群17個体と肝組織像に差は認められなかった。発現陰性個体1例の肝臓に、adenomaが観察されたが、導入遺伝子発現とは無関係のbackground病変と考えられた。今後他のラインについても解析を進め、発現と肝病変の関わりを明らかにする。
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