研究概要 |
C型肝炎肝癌の発症機序の解明及び治療法開発のために、C型肝炎トランスジェニックマウスの樹立とその解析を行った。 1 5ラインのトランスジェニックマウス C型肝炎ウイルス全長遺伝子を導入したALB-HN2(アルブミンエンハンサー・プロモーター制御)とME-HN2(SRαプロモーター制御)のラインから、各々3ライン(A44,A39,A48)と2ライン(M2,M5)について、長期飼育観察と解析を行った。解析対象は、各群12ヶ月齢と21ヶ月齢のマウスで、導入遺伝子陰性のコントロール群(NC)として、A44,A48,M2の3ライン作出時における同腹個体を用いた。解析に用いた各群のマウス数は、以下の通りである。A44-12(17),A44-21(17),NC44-12(24),NC44-21(17),A39-12(27),A39-21(23),A48-12(29),A48-21(25),NC48-12(34),NC48-21(30),M2-12(29),M2-21(26),NC2-12(30),NC2-21(23),M5-12(31),M5-21(27). 2 トランスジェニックマウスの解析 (1)発現解析 肝臓におけるHCV mRNAをRT-PCRにて検出できたのは、A44-12(1/17),A44-21(12/17),A39-12(27/27),A39-21(23/23),A48-12(29/29),A48-21(25/25)で、M2,M5の2ラインでは検出できなかった。コア蛋白質発現は、いずれも検出感度(5pg/mg protein)以下であった。 (2)肝臓組織病理解析 12ヶ月齢では、脂肪変性を含む組織変化は有意に観察されなかったが、21ヶ月齢で炎症細胞浸潤がA44に,巣状壊死がA44,A39に有意に観察された。また、腫瘍性病変としてA44に1例、M2に2例、M5に1例、認められた。いずれも発現が検出できなかった肝臓で、導入遺伝子との関連性は低いと考えられた。
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