H.pylori感染スナネズミ腺胃発癌モデルにおける宿主要因の検索

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11470063
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 愛知県がんセンター
• 研究代表者: 立松 正衛 愛知県がんセンター, 病理学第一部, 部長 (70117836)
• 研究分担者: 杉山 敦 信州大学, 医学部第一外科, 講師 (90187675) ; 池原 譲 愛知県がんセンター, 病理学第一部, 研究員 (10311440) ; 塚本 徹哉 愛知県がんセンター, 病理学第一部, 主任研究員 (00236861)
• キーワード: スナネズミ / Helicobacter pylori / 除菌 / 腸上皮化生 / 胃癌

研究概要

A.病理組織学的検索 7週齢雄性スナネズミにHp(標準株ATCC43504)を経口感染させ、Hp感染後5週・50週・75週・100週にて屠殺し腺胃標本を作製した。さらに、Hp感染後50週または75週において、Lansoprazole,Amoxicillin,Clarithromycinの3剤併用療法による除菌を行う群を作成し、除菌後4週・8週、および100週目に屠殺した。胃の組織標本に対し、HE染色、AB-PAS染色、抗Hp抗体や抗p53抗体を用いての免疫組織化学染色、およびConA・HGM・ALP等の粘液染色を施行し、細胞分化と病理形態学的検索を行った。この結果、Hp感染単独では癌の発生は認めず、Hpの持続感染によって粘膜の腸上皮化生および粘膜下増殖巣の腸型化が生じたが、これらは除菌により消失する可逆的変化であることが示された。
B.細菌学的検討 採取した胃粘膜標本におけるHpを分離培地を用いて細菌学的に検索し、Hp感染およびこのプロトコールにおける除菌の有効性を確認した。
C.抗Hp抗体による血清学的検討 屠殺時に下大静脈より採取した血清を用いて、ELISAによる抗Hp血清抗体価の測定を施行した。Hp感染群では抗体価は上昇し、除菌群では有為に抗体価は低下していた。
D.スナネズミcDNAライブラリーの作成 Hp感染後のスナネズミ・除菌後・及び対照群より胃粘膜を採取し、mRNAの抽出およびcDNAライブラリーの作成を行った。糖鎖関連酵素であるフコース転移酵素FUT4、シアル酸転移酵素ST6GalNAc1、および対照としてβ-actinおよびGAPDHのスナネズミにおけるpartial sequenceを決定した。

研究成果

• [文献書誌] Shimizu, N., Tatematsu, M. et. al.: "Helicobacterpylori intection enhances glandular stomach carcnogenesis in Mongolian gerbils treated with chemical carcinogenes"Carcinogenesis. 20(4). 669-676 (1999)
• [文献書誌] Hirayama, Y., Tatematsu, M. et. al.: "Ranematations of p53, Ki-ras, and B-catenin genes and absence of K-sain and c-erbB-2 amplification in N-methyl-N-nitro N-nitorosoguanidine-induced rat stomach cancers"Molecular carcinogenesis. 25. 42-47 (1999)
• [文献書誌] Shimizu, N., Tatematsu, M. et. al.: "New animal model of glandular stomach carcinogenesis in Mongolian gerbils infected with Helicobacter gylori and treated with a chemical carcinogen"J Gastorenterol. 34. 61-66 (1999)
• [文献書誌] 立松正衛、清水伸幸: "Helicobacter pylori感染と実験腺胃発癌"Frontiers in Gastroenterology. 4. 79-88 (1999)
• [文献書誌] 太田浩良、立松正衛: "H.pylori感染と胃発癌-H.pylori感染スナネズミにおける胃発癌実験を中心に-"組織培養工学. 25(8). 310-313 (1999)