研究課題/領域番号 |
11470063
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研究機関 | 愛知県がんセンター |
研究代表者 |
立松 正衛 愛知県がんセンター研究所, 腫瘍病理学部, 部長 (70117836)
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研究分担者 |
杉山 敦 信州大学, 医学部・第一外科, 講師 (90187675)
池原 譲 愛知県がんセンター研究所, 腫瘍病理学部, 研究員 (10311440)
塚本 徹哉 愛知県がんセンター研究所, 腫瘍病理学部, 主任研究員 (00236861)
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キーワード | スナネズミ腺胃発癌モデル / 可逆性病変 / スナネズミホモログ遺伝子 / 細胞分化マーカー |
研究概要 |
スナネズミを用いてHp非除菌群、Hp感染後除菌操作を行なった群、Hp非感染群を作成するとともに、Hp感染の血清学的評価基準である血清抗Hp血清抗体価および血清ガストリン値を測定した。これらのパラメータと照らして、Hp感染によって生じた粘膜病変と除菌による粘膜病変の修復過程における組織学的特性を解析した。 抗Hp抗体価と血清ガストリン値は非感染群に比べ感染群で有意に上昇した。組織学的にはHp感染後25週では、胃型粘液を有する腺管が粘膜下へ増生し粘膜筋板をやぶって粘膜下に増殖巣を形成する像が観察され、Hp感染後50週ではA lucian B lue PAS染色陽性の胃腸混合型の腸上皮化生が粘膜内および粘膜下の増殖性腺管に生じた。除菌を行なわないと、75週には粘膜下の増殖性病変は奨膜にまで腫瘍様の進展を示すようになり、100週では胃底腺領域で壁細胞の多くが失われるとともに、粘膜下の増殖性病変は明らかな細胞異形は認られないものの、腫瘍様に奨膜への進展を示した。この時、Paneth細胞を有する完全型の腸上皮化生も観察された。除菌を行なうと、血清ガストリン値は非感染群に近い値に向けて暫減していったが、抗Hp血清抗体価は除菌後25週では有意な変化を示さず、除菌後50週で漸く除菌処置前よりは有意な低下を示したが、Hp非感染群に比較すると有意に高値であり、抗体価から判断できるHp感染からの回復は緩徐であった。しかし組織所見では、かつて見られた粘膜下増生が消退しその領域に粘液だけが残存するのみとり、粘膜下には残存する好中球浸潤が散見される程度の炎症所見は見られるものの、Hp感染により障害され消失していた壁細胞は再び出現していた。Hp感染による粘膜下増殖性腫瘍様病変は、除菌により縮小しうる可逆性の変化であり、血清抗体価よりも血清ガストリン値の方が胃粘膜組織の修復状態を反映していると考られた。
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