本年度は、シャーガス病の病原体であるT.cruzi原虫を、抗好中球抗体腹腔投与によりあらかじめ末梢血好中球を枯渇させた枯渇群および非枯渇群のBALB/cおよびC57BL/6マウスに感染させ、感染動態について検討した。その結果、1) BALB/cマウスでは、コントロール抗体投与非枯渇群の末梢血虫血症は感染18日目まで増加、その後減少し、一部は感染30日目で虫体が検出されなくなり自然治癒した。これに対して、枯渇群の虫血症は感染16日目まで急増し、ピーク時の原虫数は、非枯渇群の約2倍に達した。2) 非枯渇群では、感染20日目から死亡し始め、同22日目で死亡率が50%に達したが、40%の個体が自然治癒し、生存し続けた。これに対して、枯渇群では感染14日目から死亡し始め、同18日目までにすべて死亡した。3) C57BL/6マウスでは、好中球枯渇群の虫血症は漸増した後に減少し、感染38日目には検出されなくなった。これに対して、非枯渇群の虫血症は、感染20日目以降急増し、ピーク時の原虫数は、枯渇群の約5倍に達した。4) 枯渇群では、感染18日目から死亡し始め、同24日目までに約70%が死亡したが、残りの30%の個体は生存し続けた。これに対して、非枯渇群も感染20日目から死亡し始め、同36日目までにすべて死亡した。 BALB/cマウスとC57BL/6マウスで、好中球枯渇処理のT.cruzi感染に及ぼす影響が全く逆の結果が得られた。来年度は、さらにマウス臓器(心臓、脾臓)におけるamastigoteの寄生数を調べるとともに、各種サイトカインのmRNAの発現について検討し、その発現の修飾状況を解析することにより感受性マウスに潜在する初期抵抗性に関与する細胞および、関連サイトカインを同定する予定である。
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