研究概要 |
新生児TSS様発疹症(neonatal TSS-1ike exanthematous disease,NTED)は、生後数日の新生児にMRSAから産生されたスーパー抗原TSST-1が応答性Vβ2+T細胞の過剰活性化を誘導して惹起された疾患である(N.Takahashi et al.Lancet,351:1614,1998)。今年度はこの疾患とマウスを用いた動物実験についてさらに解析を続け以下の結果を得た。 1)NTED患児末梢血Vβ2+T細胞は急性期には上昇し、1週間内に正常値まで減少し、さらに1-2カ月後には正常値の20%まで減少する。2)無症候性MRSA保菌新生児10人の解析では、3児において Vβ2+T細胞の増加は見られないがCD45ROの発現率が上昇し、Vβ2+T細胞の活性化が起こっていることが示された。3)NTED急性期の患児の末梢血T細胞はTSST-1によるin vitro刺激に対して極めて低応答であり、アナジーが誘導されていることが示された。4)NTED患児ではIgG型抗TSST-1抗体が急性期には極めて低値であった。また、無症候性MRSA保菌児のうち、Vβ2+T細胞にCD45ROの発現率が増加した児では抗TSST-1抗体は低値であり、増加が見られなかった児では抗体は高値であった。これらの所見は、抗TSST-1抗体はNTEDの発症を防止していることを示している。5)NTED患児では発症の極初期ではVβ2+T細胞は増加が見られずに逆に著しい減少が見られた。6)マウスに浸透圧ポンプにSEAを封入して移植した実験では、SEA応答性CD4+T細胞は長期間の著しい増加がみられ、また免疫記憶とも呼べる応答性が見られた。
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