Creによる遺伝子置換反応を応用した新しいアデノウイルスベクターの作製法を確立するために、まずE1欠失型アデノウイルスベクター(第1世代)の作製を行い、次いでウイルスゲノムの大半を目的遺伝子と置換したヘルパーウイルス依存型アデノウイルスベクター(guttedベクター)作製のためのrecipientウイルス及びコスミドカセットの構築を行った。第1世代アデノウイルスベクターの作製のためのrecipientウイルスは、ウイルスパッケージングシグナル(Ψ)の両側をCreの標的配列loxPで挟み、Creの欠失導入によりΨが切り出されるように設計した。その下流にLacZあるいはFLP発現単位と野生型loxP(V)を挿入した。Ψと目的遺伝子をloxPとVで挟んだ目的遺伝子用プラスミドとrecipientウイルスをCre発現293細胞へ導入し、得られた粗ウイルス溶液をCre発現293細胞で5回継代を繰り返したところ、遺伝子置換反応により目的遺伝子を発現するアデノウイルスベクターが生成した。またこの粗ウイルス溶液を293細胞を用いて限界希釈を行うことで簡便に目的ウイルスのみを単離する事も可能であった。次にguttedベクターを構築するためのヘルパーウイルスとしても機能するrecipientアデノウイルスを作製した。このrecipientウイルスは第1世代ベクター用とほぼ同じ構造をしているが、Vはウイルスゲノムの右端に挿入されている。またguttedベクター用コスミドカセットはΨと目的遺伝子発現単位クローニングサイト、stufferクローニングサイトをloxPとVで挟んでいる。目的遺伝子やstufferには大きな遺伝子の挿入を行うため、クローニングサイトとして8塩基認識の平滑末端切断の酵素を選択し計4種類構築した。現在guttedベクターの生成を試みている。
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