センダイウイルスは他のパラミクソウイルス同様にP遺伝子から異なる翻訳開始点を使うことにより、C蛋白質で総称されるC'、C、Y1、Y2蛋白質を産生する。これらC蛋白質には、すべてインターフェロンに対抗する能力とウイルスRNA合成を負に調節する能力があることが判明した。そこで、これらの機能が蛋白質のどの領域に存在するのかを明らかにするために、様々に短く削ったC蛋白質を産生する細胞株を作成し、発現蛋白質の長さと機能との相関を検討した。C蛋白質のカルボキシル末端側半分の100アミノ酸部分を残したC蛋白質には、抗インターフェロン効果も、RNA合成阻害効果も見られたが、さらにN未端あるいはC末端から削ったC蛋白質にはどちらの効果も消失した。このことから、抗インターフェロン効果とRNA合成且害効果はどちらもC蛋白質のカルボキシル末端側半分の100アミノ酸部分に存在することが明らかになった。互いの機能領域がまったく重なっているのか、あるいは近接して存在するだけなのかはこの実験からは判明しなかった。C蛋白質のカルボキシル末端側半分の100アミノ酸部分はヒトパラインフルエンザウイルス1型のC蛋白質とも相同性が高い部分であり、事実、センダイウイルスのC発現細胞であっても、ヒトパラインフルエンザウイルス1型のRNA合成が抑制され、ウイルス増殖が抑えられる。このことからC蛋白質のこの部分をうまく活用することにより、パラミクソウイルス特異的なウイルス阻害剤となる可能性が考えられた。
|