研究概要 |
本研究課題はヒト白血病ウイルス(HTLV-1)とエイズウイルス(HIV),B型肝炎ウイルス(HBV)のmRNA輸送に関する細胞因子の研究であるが、今年度はHTLV-1/HIVについての結果が出た。HTLV-1/HIVの輸送因子であるRex/RevはmRNA上で多量体化することが、mRNAを輸送するために必要である。我々はRev/Rexの主要コファクターであるhCRM1がこの多量体化に必須であることを報告してきた。今年度はラットrcrm1cDNAをクローニングしてhcrm1と比較することによって以下の結果を得た。1.rCRM1とhCRM1は97%のアミノ酸が一致する。2.hCRM1はRev/Rexの両方の活性を支持するがrCRM1はRexの活性をほとんど支持しない。この原因を追求したところ、rCRM1はRex蛋白と結合し、核外移行を促すが、Rexを多量体化させることができないことが分かった。さらにRev/Rexとの結合と多量体化促進能はCRM1内の別のドメインが担うことが明らかになった。これらの結果はCRM1の多量体化支持能はRexとの結合能とは独立した機能であることを示唆している。さらに、RexがHTLV-1 RNAを輸送するためには、単にCRM1がRexの核外移行行配列(NES)に結合して、核外に運ぶだけでは不十分であり、より高次の相互作用を通じてRexを多量体化させることが必要であることを示している。
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