研究概要 |
我々はこれまでに,精製センダイウイルス(HVJ)粒子を用いた効率のよい,かつ正確なin vitro転写系を開発し,HVJの転写には細胞由来の複数のタンパク質性因子(宿主因子)が必要であることを見出した.今年度は,宿主因子の精製とその機能解析をさらに進め,以下の結果を得た. HVJのin vitro mRNA合成を促進する指標として,ウシ脳抽出液より宿主因子活性を精製したところ,4つの相補的な分画に分離された.4つの因子をそれぞれ単一タンパク質にまで精製した.このうちの2つの因子について,それぞれ細胞骨格系タンパク質のチューブリンと解糖系酵素のホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)であることを明らかにした.これら因子の機能については,チューブリンは転写開始反応に必要であるが,PGKを含む他の3因子はRNA鎖の伸長反応において協調的に作用することを示した.また,PGKの酵素活性そのものはHVJの転写促進活性には必要ないこ,ウサギ,酵母からのPGKおよび組換えヒトPGKも同様の転写促進活性を示すことを明らかにした.さらに,West-Western blot分析によりPGKとチューブリンは直接相互作用すること示した. HVJゲノム3'末端リーダー配列(le)からは,(+)リーダーRNAと呼ばれるタンパク質をコードしない短鎖RNAが転写されるが,その合成機構と意義は不明である.我々は,ゲノムle配列に特異的に結合する因子(leader binding protein:LBP)を見出し,その部分精製と性質について検討した.その結果,LBPは少なくとも2成分,p90とp37,からなり,単鎖le配列よりもleを含む2本鎖に強い親和性を持つことが明らかになった.
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