免疫系ケモカインの生理機能と病的役割の解明

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11470091
• 研究機関: 近畿大学
• 研究代表者: 義江 修 近畿大学, 医学部, 教授 (10166910)
• 研究分担者: 野見山 尚之 熊本大学, 医学部, 講師 (00156225) ; 宮澤 正顕 近畿大学, 医学部, 教授 (60167757)
• キーワード: ケモカイン / ケモカインレセプター / 成人T細胞白血病 / fractalkine / TARC / LARC / 喘息 / アトピー性皮膚炎

研究概要

本研究では、近年我々も含めた幾つかのグループによって発見され、おもにリンパ球や樹状細胞を標的とする、いわゆる「免疫系ケモカイン」の生理的および病的役割を試験管内および生体で明らかにすることを目的とする。今年度の成果は以下の通りである。1、ケモカインの名称に関して国際的に統一された命名法を考案し、提唱した。2、おもに2次リンパ組織で構成的に発現するケモカインSLCとELCのレセプターであるCCR7に対する単クローン抗体を作製し、成人T細胞白血病での白血病細胞の2次リンパ組織への組織浸潤はCCR7の発現レベルと強く相関することを明らかにした。3、可溶性のfractalkineは百日咳毒素感受性シグナル伝達機構を介してβ1およびβ2インテグリンを活性化することによって単球のfibronectinやICAM-1への結合を誘導することを明らかにした。4、膜結合型のfractalkineはレセプターCX3CR1を発現するNK細胞の血管内皮細胞への結合と細胞傷害を促進することを明らかにした。5、Th2タイプのCD4陽性メモリーT細胞を選択的に遊走するケモカインTARCはTNF-αやIL-4などのサイトカイン刺激により気道上皮細胞で誘導されること、この誘導は糖質グルココルチコイドで抑制されること、さらに喘息患者の気道上皮はTARCを産生していることを明らかにした。6、腸管や皮膚に選択的にホーミングするメモリーT細胞および未熟な樹状細胞を選択的に遊走するケモカインLARCはヒトの正常皮膚角化細胞からIL-1やTNF-αなどのサイトカイン刺激で誘導されること、アトピー患者の患部皮膚では表皮細胞でのLARCの産生とそのレセプターCCR6陽性細胞の真皮への浸潤がみられること、およびアトピー患者では血漿中のLARCの値が上昇していること、を明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Zlotnik,A.and Yoshie,O.: "Chemokines : a new classification system and their role in immunity"Immunity. 12・2. 121-127 (2000)
• [文献書誌] Hasegawa,H., et al.: "Increased chemokine receptor CCR7/EBI1 expression enhances the infiltration of lymphoid organs by adult T-cell leukemia cells"Blood. 95・1. 30-38 (2000)
• [文献書誌] Goda,S., et al.: "CX3C-chemokine, fractalkine-enhanced adhesion of THP-1 cells to endothelial cells through integrin-dependent and-independent mechnisms"Journal of Immunology. 164・8. 4313-4320 (2000)
• [文献書誌] Yoneda,O., et al.: "Fractalkine-mediated endothelial cell injury by NK cells"Journal of Immunology. 164・8. 4055-4062 (2000)
• [文献書誌] Sekiya,T., et al.: "Inducible expression of a Th2-type CC chemokine thymus and activation-regulated chemokine by human bronchial epithelial cells"Journal of Immunology. 165・4. 2205-2213 (2000)
• [文献書誌] Nakayama,T., et al.: "Inducible expression of a CC chemokine liver and activation-regulated chemokine (LARC)/macrophage inflammatory protein (MIP)-3alpha/CCL20 by epidermal keratinocytes and its role in atopic dermatitis"International Immunology. 13・1. 95-103 (2000)