研究概要 |
胎盤CRH-オピオイド系は、成体の視床下部-下垂体のそれと同じように存在するが、その生理的役割は不明である。熱ストレスの胎盤循環動態への影響とその生理的機序を調べる実験では、熱ストレスに際して、妊娠ラットの胎盤血流量の減少が認められたが、CRH 受容体拮抗剤であるα-helical CRH(9-41)の前投与によっては、血流量の低下は起こらないことがわかった。また、cyclooxygenase拮抗剤である indomethacinの前投与によっても、血流量の低下を抑制できた。熱暴露によって胎盤prostaglandin(PG)F_<2α>の増加が生じるが、その増加は、α-helical CRHの前投与によっては抑制できず、indomethacinの前投与によってだけ抑制できた。熱暴露は胎盤β-endorphinの変化を引き起こさなかったが、α-helical CRHは、胎盤β-endorphinを減少させた。以上の結果より、熱ストレスに際しては、胎盤CRH受容体が活性化され、その結果、胎盤血流量の減少が生じるが、その際には、胎盤 PGF_<2α>が関与していると推測された。熱ストレスによる胎盤循環障害には、胎盤オピオイド系の関与は否定的であった。また、マイクロ波(CW,2mW/cm^2,2450 MHz)による胎盤循環障害を調べる実験では、胎盤血流量低下と血中 PGF_<2α>の増加は、胎盤血管拡張剤である angiotensin IIの前投与によって抑制されることが認められた。したがって、マイクロ波による胎盤血流量低下においても、PGF_<2α>の関与が示唆された。
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