研究概要 |
[目的]高血圧症とアンジオテンシノーゲンの遺伝子多型(M235T:アミノ酸コドン235におけるメチオニンのスレオニンへの変異)との関連性については、多くの研究が実施され議論されている。しかし、これらの研究はサンプルサイズの小さい患者・対照研究によるものがほとんどである。患者・対照研究には、交絡要因などによる多くのバイアスが潜んでいる可能性があり、この遺伝子多型と高血圧症との関連性をより明確なものにするためには、大規模なコホート研究が不可欠である。そこで、サンプルサイズが一定程度大きい職域集団における後ろ向きコホート研究を実施した。[方法]対象は島根県A職場の職員で1998年検診時に遺伝子検査についてのインフォームドコンセントの得られた者1001人である。1992年における定期健康診断時をベースライン(高血圧症の有病者を除外)として1998年における高血圧症発症に関する後ろ向きコホート研究を実施した。PCR法を用いてアンギオテンシノーゲン遺伝子多型(M235T)の同定を行った.解析は、ロジスティック回帰分析法を用いて相対危険度を算出した。[結果]単変量解析では年齢、BMI、血圧値、血糖,HDL等が高血圧症発症に関する有意な相対危険度を示した。多変量解析では、年齢と血圧値が高血圧症発症に関する有意な相対危険度を示した。遺伝子多型(MM型に対するMT,TT型)については、単変量解析・多変量解析ともに高血圧症発症に関する有意な相対危険度は認められなかった。[今後の展開]さらにサンプルサイズを大きくして,生活習慣に関する情報も加えて遺伝子多型との関連性について解析を継続したい。
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