ダイオキシンは、内分泌を撹乱し、発癌作用も有する環境中の微量有害化学物質であると考えられているが、現段階では、動物実験による証拠だけで、実際ヒトの健康に影響を及ぼすのかどうか明らかにされていない。それは、ダイオキシンを含む化学物質の安全性評価の手法が確立されていないからである。トキシコロジーで最も重要なのは、量・反応関係および量・影響関係である。すべての毒性は、奏効部位での量によって決まるというのが原則である。これまでのダイオキシンの生体影響は、すべて投与量(曝露量)を基に推定され、耐容1日摂取量も全て投与量を基に計算されてきた。しかし、真の毒性量や基準量を決定するのは、奏効部位の有害物質の量であるという原則に基づいてこれからの毒性量や基準量は推定される必要がある。このような量・反応関係を求めるためには、生体組織中のダイオキシンの測定を正確にすること、ダイオキシンの投与量と体内量(特に奏効部位)の関係を求めること、ダイオキシンの体内での代謝を明らかにし、生物学的半減期や臓器分布を正確に知ることが必要不可欠である。そのため、本年度は(1)血液、標的臓器、軟部組織におけるダイオキシン(TCDD)およびベンツピレンのassay系を液体クロマトグラフィを用いて確立する、(2)予備実験をして、低用量から高用量のダイオキシン(TCDD)あるいは、ベンツピレンをラットに与え、量・反応関係の確立と投与期間を決定する予定であり、現在基礎実験が進行中である。
|