1.化学物質の代謝・毒性発現におけるALDH2の関与についての検討 Aldh2 genotypeが+/+、+/-、-/-の3種のマウスに、エチレングリコールモノメチルエーテル(EGME)500mg/kg単回投与およびEGME150、200、300mg/kg5日間連続経口投与を行い、最終投与1日後に屠殺し、精巣重量測定および組織像の変化を調べた。500kg単回投与では、Aldh2に無関係に精巣重量の約15%の低下がみられた。連続投与では、Aldh2+/+、+/-、-/-ともにEGME投与群で投与量に依存して精巣重量の低下が認められたが、Aldh2 genotypeによる差は認められなかった。組織学的にもEGME投与により、精母細胞による障害を認めたが、Aldh2 genotypeとは関係がなかった。また、EGME投与後の尿中代謝物(メトキシ酢酸)の排泄パターンもAldh2 genotype間に差はなかった。一般にEGMEの代謝にはAldh2が関与すると考えられており、昨年度のin vitroにおける本研究結果もそれを支持するものであった。しかし、今年度の尿中代謝物の排泄パターンと精巣毒性のレベルにAldh2 genotypeによる差が認められなかったことから、生体内(in vivo)ではEGME代謝のkey enzymeとして働く酵素(群)が別にある可能性が示唆された。 2.エタノール摂取による薬物代謝酵素の変化 上記の3種のマウスにエタノールを経口投与し、肝のチトクロムP-450の変化を調べた。総P-450量はgenotypeによる変化はなかったが、Cyp2e1活性(p-nitrophenol hydroxylase activity)は+/-、-/-マウスで上昇する傾向が認められた。
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