研究課題
基盤研究(B)
富山県内に所在する2つの事業所において、交替勤務に従事する全男性労働者699名を対象として初年度の基礎研究を行った。睡眠感の良好さと健康関連QOL(生活の質に関するSF-36調査項目)の良好さとは大半の組み合わせで有意な正の相関(偏相関係数)を示した。睡眠時間数は睡眠感の因子の統合的睡眠(ぐっすり感)と関連していたが、健康関連QOLとは有意な相関がなかった。交替制勤務(昼間勤務と深夜勤務)よる睡眠感ならびに睡眠時間の変化では、睡眠感の因子の中で、ねむ気(すっきり感)の平均スコアが、昼勤務後に比べて深夜勤後で悪化していた。一方、平均睡眠時間は昼間勤務後に比べて深夜勤後で2時間延長していた。LHR(心拍変動解析による交感神経活動性の指標)の湿温度環境への感受性を、昼勤と夜勤のそれぞれの期間で比較した。昼勤期間中は労働期間中も睡眠時間中も不快指数が上がるとLHRも上昇した。しかし、夜勤期間中にはその傾向が崩れ、特に睡眠時間中には量反応関係の方向が逆転した。また、昼勤および夜勤期間のいずれでも、労働時間中の交感神経活動性は睡眠時間中に比べて有意に上昇していた(p<0.001)。本調査研究で用いた質問票への回答から、健康に関するQOLは、睡眠の長さではなく睡眠の質と密接な関連性を持つことが示された。一方、心拍変動のスペクトル解析の結果から、自律神経系の活動と環境の温度・湿度との関連性が昼勤期間中と夜勤期間中で相違がみられ、特に深夜勤務時の自律神経の適応能力が低下していることが示された。
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