アルツハイマー病(AD)については発症のリスクを上げる感受性遺伝子と呼ばれる遺伝子は数多く報告されるようになった。本研究はこれらの感受性遺伝子について既存の研究に例のない日本人の多数の症例を用いて十分な検討を加えることを第一の目的とする。 症例は500症例の収集を終了した。遺伝子解析はすべての症例でインフォームドコンセントを得、アポリポ蛋白遺伝子、超低比重リポ蛋白受容体(VLDL)遺伝子、インターロイキンIαについて解析した。その結果、従来どおりAPOEのε4はアルツハイマーの危険因子であることが本対象についても明らかになった。VLDL受容体遺伝子多型における対立遺伝子頻度が対照群で5-repeat、8-repeat、9-repeat、10-repeatがそれぞれ、0.353、0.592、0.048、0.007であったのに対し、AD群では0.408、0.539、0.041、0.012であり、その分布に差が認められた(p=0.049)。さらに、対立遺伝子5-repeatを有するものは、有さないものに比べて、APOE遺伝子多型と年齢、性で調整したオッズ比が1.56倍となり、有意に、危険因子として評価された。一方、インターロイキンIαは統計的に有意な差を認めなかった。生活習慣などとの関連は多変量解析により評価したが、明らかにリスクとなるものが見出せなかった。
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