研究概要 |
本研究は、健常者集団内に潜在するHCVキャりアを検診により組織的に見出し、肝がん死亡の減少をめざした肝炎、肝がん対策のモデルを樹立し、その有効性の評価を行うことを目的としている。研究期間内に、得られた結果は次の通りである。 1.広島県では86市町村中34市町村(延べ68,486人)でHCV検診が実施されるまでに至った。最終的に「C型肝炎ウイルスに感染している」か否かの判定後、受診者への通知をするシステムにより検診を実施している、28市町村延べ54,523人のうち個人の重複を除いた54,523人について、2000年時点の年齢に換算した年齢別HCV感染率を算出した。70歳代の年齢集団のHCV抗体陽性率は8.3%、HCVキャリア率は5.0%と、高年齢層におけるHCV感染の実熊を初めて明らかにした。 一方、広島市における30,341人を対象としたHCV検診結果を解析、検討し、第1次スクリーニング検査のHCV抗体測定を、一般に使われているサンドウィッチ法により実施した場合、抗体陽性と判定されるのは2,962例9.8%にのぼるが、最終的にHCVに感染していると判定されたのは732例2.4%に過ぎず、第1次スクリーニング検査のあり方を再考する必要性が示唆された。 2.県内A町(HCV高度侵淫地区)の検診を契機に発見されたHCVキャリア(236例)を対象に、腹部超音波検診・口腔粘膜病変検診を昨年度に引き続き継続して実施した。今年度(平成13年度)は計54例が超音波検査を希望したが、昨年度に引き続き受診した33例中4例の肝内に占拠病変が新たに見出され、さらに4例中2例は画像診断上肝がんが疑われ、検診により発見されたHCVキャリアについて定期的な腹部超音波検診の必要性が明らかとなった。一方、54例中10例に口腔粘膜病変が認められ、高年齢層のHCVキャリアには、口腔内病変が想像していた以上に高頻度に認められることを初めて明らかにした。 3.一般健常者集団の中から既に見出しているHCVキャリア集団及びC型慢性肝疾患患者症例の病期と進展を肝臓専門医の協力のもとにプライバシーの保持を重視しながらデータベース化し、長期慢性肝疾患の病態推移を推計するための数理モデルの構築を行なった。その結果、40歳時点における無症候性キャリアは、60歳になると男性では約1割(10.6%)、女性では4.5%が「肝がん」へ進展すると推計された。また、男性では60歳以上、女性では70歳以上の年齢層で肝発がん率が著しく高くなるとの成績が得られた。
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