研究分担者 |
西村 泰治 熊本大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (10156119)
林田 一洋 九州大学, 医学部・附属病院, 助手 (60180981)
中村 稔 九州大学, 医学部・附属病院, 助手 (40217906)
福井 宣規 九州大学, 医学研究院, 助教授 (60243961)
笹月 健彦 九州大学, 医学研究院, 教授 (50014121)
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研究概要 |
【研究目的】原発性胆汁性肝硬変(PBC)の病態形成に深く関わっていると考えられる抗ミトコンドリア抗体の対応抗原のB細胞エピトープ,T細胞エピトープを同定し,抗原特異的T細胞による抗原認識様式を解析することより,PBCの病因分子を明らかにし,PBCの発症,病態の形成を担っている免疫応答機構を明らかにする. 【研究方法・結果】(1)PBC患者より抗PDC-E2抗体を産生するB細胞をクローニングし,その抗体遺伝子のVβCDR領域を解析した.その結果(1)3つの抗体遺伝子H鎖及びL鎖の可変領域はそれぞれ異なった遺伝子ファミリーを利用していて,特異的な遺伝子ファミリーの使用はなかった,(2)体細胞突然変異が確認され,抗原誘導によるクローン選択が推定された,(3)2年5ヶ月の長期間高いアフィニティを有する自己抗体を産生する同一B細胞クローンの存在が確認された. (2)PBC患者および健常人より,既にわれわれが明らかにしたミトコンドリア抗原のT細胞エピトープPDC-E2 163-176に特異的なT細胞クローンを樹立し,PDC-E2 163-176ペプチドとホモロジーを有する細菌由来抗原および自己抗原由来の14-merのペプチドとの交差反応性を検討した.その結果,抗原特異的T細胞クローンの反応パターンは2つに分類された.一つはPDCのE3BPやOGDC-E2由来のペプチドと反応するだけでなく大腸菌その他の細菌由来のペプチドとも反応した.他の一つはEIExDモチーフを有するE3BP由来のペプチドとのみ反応し,ExDKモチーフを有する細菌由来のペプチドとは反応しなかった. 【結論】抗ミトコンドリア抗体の産生は他の外来抗原に対する抗体同様抗原刺激誘導によるクローン選択によるものであり,肝臓局所における恒常的な抗原の存在が示唆された.また,T細胞が分子相同性機構や交差認識機構を通じてPBCの発症や自己抗体の産生に中心的な役割を果たしている可能性,および大腸菌がPBCの発症と免疫病態の維持に関与している可能性が明らかになった.
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