研究概要 |
本研究では我々が決定した、ヒト第6染色体短腕6P21.3に位置するHLA領域の極めて精度の高いゲノムシークエンシングの成果(1.8Mb)の成果をもとに、2,つのヒト疾患(ベーチェット病および尋常性乾癬)について,その遺伝的素因となる原因遺伝子の候補を同定し、それぞれの疾患モデルとなるマウスを作製することを目的とした。 3年間に以下の成果を得た。 1.疾患感受性遺伝子の同定では、尋常性乾癬感受性領域をHLA-C遺伝子座のテロメア側89Kbから143Kb内に絞り込み、1個の既知遺伝子以外に皮膚組織で発現する4個の新規遺伝子を見い出した。広域の塩基翫列解析により、その中でもSEEK1遺伝子は統計的に有意差を示す多型部分が同定され、注目される。患者患部での発現に変化が検出されている。 ベーチェット病に関してはほぼHLA-B遺伝子そのものか、近傍のMICA, MICBなどの遺伝子が真の原因遺伝子であるかについて集中した解析がなされ、最終的にHLA-B51アレルが疾患感受性を規定するアレルであることが統計遺伝学的に決定できた。 2.疾患モデルマウスの開発では、尋常性乾癬については近傍の約30Kbの領域を含むトランスジェニック(Tg)マウスが誕生したところである。 またベーチェット病では1.の遺伝子解析の決着がつく前にすでにTgマウスの作製を開始し、MICA, MICB遺伝子導入マウスでは体重、皮膚、白血球数に異常が認められる事を見い出し、間接的に発症に関与する可能性を示した、一方最終結論のHLA-B51アレルのTgマウスではヒトβ2マィクログロブリン遺伝子をもつ2重Tgマウスをまず作成し、HLA-B51分子の細胞表面上への発現が飛躍的に増大していることを確認した。現在マウスβ2マイクログロブリン遺伝子欠損マウスと交配することによりヒト型マウスの作製を試み、成功した。
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