H.pylori感染時の宿主免疫系におけるシグナル伝達の変容を調べた。Th1とTh2は感染時における免疫調節に中心的な役割を担う。我々はH.pylori感染は初期(2週間)ではTh1を誘導し、後期(6週間)にはTh2が優位になることを明らかにした。この変換は主にウレアーゼに特異的なCD4陽性T細胞を介して行われ、さらに感染後期のウレアーゼ特異的なhigh-avidity JNK+Th1の低下とlow-avidity JNK-(おそらくTh2)の増加が関連していると考えられる。この結果、H.pyloriの定着は2週間目に比べて6週間目の方が100倍高い。HIV gp160を発現させた組み換えワクシニアウイルスを感染させたときH.pylori感染6週間後においてHIV gp160に特異的なCD4陽性Th細胞とCD8陽性CTLのエフェクター細胞への分化は抑えられ、IL-12の分泌もわずかであった。H.pylori感染におけるJNK+Th1からJNK-Th2への変換とそれに続くIL-12の分泌の低下はウイルスに対する免疫応答の低下に重要なステップであると考えられた。一方C型肝炎ウイルス(HCV)は、肝炎、肝癌の原因となるが、炎症病態の進展には、炎症性サイトカインや接着分子などの発現調節をしている転写因子NF-kBが重要な役割を持つと考えられている。得た結果として1)HCVのコア抗原発現8、24時間後において、感染によるNF-kBの活性化が認められた。2)HCVによりCOX-2proteinの誘導とその産物の一つであるprostaglandin E2の産生が有意に認められた。HCVコアによりNF-kB活性が上昇したことから、炎症性サイトカインや接着分子が発現して肝炎や肝硬化が進展すると考えられた。さらに長期的には発がんの可能性も示唆される。
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