研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)感染は高頻度に持続化し,慢性肝炎,肝硬変へと進展し,肝癌を発生する.感染細胞のウイルス排除にはウイルス感染細胞を認識し,傷害するウイルス特異的細胞障害性T細胞が直接的な役割を果たすが,その応答はヘルパーT細胞や各種サイトカインにより調節されている.本研究において私達はHCV排除の生体応答をヘルパーT細胞応答を中心に解析した.HCV蛋白に対する応答はインターロイキン4産生を主体とする2型T細胞応答でなくインターフェロンγ産生を主体とする1型T細胞応答が優位であること,しかし,HCV蛋白は1型T細胞応答を抑制するインターロイキン10産生細胞も刺激し,C型慢性肝炎の末梢血ではHCV蛋白に応答するインターロイキン10産生細胞がインターフェロンγ産生細胞よりも多く存在し,抗HCV応答が抑制されていることが明らかになった.更に,肝組織中には末梢血のHCV特異的ヘルパーT細胞が集積する形で存在すること,末梢血のインターフェロンγ産生細胞とHCV RNA量の間には負の相関があること,インターフェロンを投与すると投与1か月の時点ではかえってインターフェロンγ産生細胞が抑制され,その後徐々に回復すること,HCVコア蛋白とHCV NS3蛋白には患者間で共通に高頻度にインターフェロンγ産生あるいはインターロイキン10産生を刺激する部位が存在することが明らかになった.また,HLA-A^*0206に提示され,細胞障害性T細胞に認識されるHCV抗原エピトープが同定された.
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