研究概要 |
心停止者の肝を肝移植に用いる際には,脳死者の場合より重篤である類洞内皮細胞の障害を予防するとともに,その再生を促進する方法を確立する必要がある。また,増殖した類洞内皮細胞はpericyteである星細胞とともに,類洞を再構築しなければならない。そこで,平成13年度はAngiopoietin(Ang)-1及び-2に注目して,肝類洞再構築の機序を検討した。 先ず,ラットより単離した肝構成細胞におけるRT-PCRで,類洞内皮細胞と星細胞は両Angの受容体であるTIE-2mRNAを発現することを証明した。更に,70%肝部分切除や四塩化炭素投与を行ったラットで,類洞の再構築や毛細血管化が生じる時期には,肝における両AngとTIE-2のmRNA発現が増強することを明らかにした。内皮細胞へのpericyteの裏打ちにはAng-1が,drop-offにはAng-2が関与することから,肝でもAng-TIE受容体系が血管系の再構築に関与していると考えられた。現在,免疫組織染色により,蛋白レベルで両AngとTIE-2の発現変化を確認している。 移植肝における類洞内皮細胞障害には活性化Kuppfer細胞が関与する。そこで,本年度はKuppfer細胞の活性化機構に関しても検討を追加した。Th1免疫応答の開始にはOsteopontinが必須であることから,そのトランスジェニック・マウスを作成した。このモデルを今後は肝移植実験に用いて,類洞内皮細胞障害の機構解明に役立てる予定である。
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