研究概要 |
COPDは肺気腫病変and/or気道病変による気流制限(flow limitation)によって特徴付けられ、この両者を弁別することが病因の決定・治療の確立には重要である。このために、まず私共は、肺気腫病変の最適な撮像条件を定め、その結果を日本呼吸器病学会のCOPDガイドラインに採択された。また、肺気腫の指標であるLAA%を用いて、肺気腫病変の分布を検討した。その結果、肺気腫病変は肺の内層に多く分布すること(Nakano,Thorax)、肺気腫病変の分布は気管支構造に制約されるフラクタル構造を持ち、そのフラクタル次元は早期肺気腫の検出に有用であることを示した(Mishima,Proc.Natl.Acad.Sci.)。次にCOPDの気道に関する検討を加えた。大気道である気管の形状の自動解析を行い、COPDでは気管の形状が正常に比べて歪んでおり、その程度は閉塞性障害の程度と相関しる事を示した。さらに右上葉気管支の自動解析を行い、COPDでは正常に比べて気道壁が厚く、内腔が狭いこと、すなわち、気道壁の面積を気道面積で割った指標(WA%)が大きいことを示した。さらに、LAA%とWA%を用いる事により、相補的にCOPDにおける閉塞性障害を説明できる事を示した(Nakano,Am.J.Crit.Care Respir.Med.)。この事は、CTによってCOPD患者における肺気腫と気道病変の病態に対する寄与度が定量的に測定できる可能性を示し、臨床的に有用であると考えられる。
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