COPDにおける連続した低吸収領域のサイズと数の関係の間にフラクタル性があることを報告している。フラクタル性とは、視野を拡大していっても同じ構造が認められることを意味し、自然界では、雲・海岸線・月のクレーターなどに認められる。フラクタル次元はフラクタル構造の複雑さを示す指標で、次元が大きいことは構造が複雑になることを示している。肺においても気管支の分岐形式や血流分布にフラクタル性があることが報告されており、LAAの分布にフラクタル構造があることは、肺気腫の分布が肺の基本構築に強く制限されていることを示唆している。また、たとえLAA%が正常範囲にあるCOPDでも、CLAのフラクタル次元は有意に正常群より小さいことを報告している。これはLAA%の正常なCOPDにおいても肺胞破壊によって、個々のLAAのサイズが大きくなり、構造が簡単になっている症例が多いことを示しており、フラクタル次元が肺気腫の早期診断に有効であること可能性を示している。 肺気腫病変と同様、気道病変に関するCT診断も重要な課題である。この気道病変を定量化するために、画像に対して垂直に切れることの多い右上葉肺尖部気管支を選択し、気道の内腔面積と気道壁厚を自動解析した。その結果、正常郡に比べてCOPD群では、有意に気道内腔の面積が小さく気道壁が太いこと、さらに、この結果として、気道壁面積の気道全体の面積に対する比(wall area percent : WA%)がCOPDで有意に大きいことを報告している。これは、慢性炎症による気道粘膜の肥厚や気道壁の恒久的変化(リモデリング)によると考えられる。さらに、単回帰分析による肺機能検査に対するLAA%の相関が、LAA%にWA%を付加したときに改善されるか否かを多重回帰分析を用いて検討した。その結果、肺気腫でのガス拡散面積の減少をよく反映するとされる肺拡散能は、LAA%にWA%を付加しても相関は改善されなかった。これに対して、1秒量・1秒率・ピークフローなど、COPDの気流制限を示す指標ではLAA%にWA%を付加すると相関が改善することが分かった。つまり、肺気腫の指標であるLAA%と気道病変の障害であるWA%が相補的にCOPDの閉塞性障害を説明できることを示唆している。
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