研究課題
基盤研究(B)
初年度における計画は、肺の微小血管における内皮細胞の部位別特異性を検討することにあった。免疫組織学的な新しい分類法の作成を試みた結果次の特徴を見いだすことが出来た。すなわち、内皮細胞の細胞膜に存在する抗凝固タンパクであるthrombomodulin(TM)と、細胞質に存在する凝固タンパクであるvon Willebrand factor(vWf)とを標識にして蛍光抗体二重染色法にて観察することで内皮細胞を明らかに分類することが出来た。1)肺動脈系の微小血管である肺胞毛細血管の内皮細胞はTM優位型の発現を、2)結合組織(気管支動脈系)の微小血管の内皮細胞はvWf優位型の、3)両者の境界にある微小血管内皮細胞は、TM/vWfのモザイク型発現を示した。この特徴はこれまでに知られておらず、TM,vWfは内皮細胞を分類する最も容易な標識となることを知り得た。また、in vitro系での内皮細胞の培養法も、通常の培養液の代わりにMatrigel Matrixを用いることで、肺動脈、肺微小血管、気管支動脈に類似する大動脈などそれぞれの内皮細胞系が、上記標識抗体に対してin vivoにおける表現型を再現する事実を見いだした。病的変化(肺腺癌、肺線維症)での発現型の転換機序を研究するための格好のモデルを創りあげたことになる。今後この基本的手技を用いて特異プローブ作製に向かう予定である。
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