研究概要 |
(1)全国からの依頼検体を含めた本症候群30症例の血清・血漿VEGF濃度の測定および個々の臨床症状との関連を解析した.その結果,血清VEGF濃度は血漿VEGF濃度に比べ著しく高値であり,また主要症候と血清VEGF濃度に関連のあることが示され本症候群の病態におけるVEGFの重要性が裏付けられた.(2)ラット坐骨神経へのVEGFのintraneural injectionによる神経障害の電気生理学的・病理学的検討によりVEGFのisoformと神経障害との関連が明らかとなった.(3)本症候群に伴う凝固亢進状態の機序解明のため,患者より調製した血小板の解析により血漿よりも高値を示す血清VEGFは血小板中に存在していること,血小板への生理的刺激による凝集により多量のVEGFが放出されることが明らかとなり,本症候群における抗血小板療法の重要性が示された.次年度は血小板中にVEGFがstoreされる機序について骨髄巨核球によるVEGFの過剰産生および血小板の末梢血中でのVEGFの取り込みの二方向より検討する予定である.(4)VEGF産生ヒトglioblastomaのnude mouseへの移植に成功し血清VEGF濃度の上昇を確認した.次年度は諸臓器摘出標本を用いて病理学的に本症候群患者の剖検標本と比較検討し高VEGF血症の生体組織に及ぼす影響を検討する予定である.(5)VEGF発現transgenic mouse作成のための準備が整い次年度より開始予定である.
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