研究概要 |
(1)全国のCrow-Fukase症候群患者40例で血清VEGF濃度を測定し,臨床症状および臨床検査所見との関連について検討した。その結果,Crow-Fukase症候群の主症状の数が多いほど血清VEGF濃度が高く,診断的価値が高いことが明らかになった。また血清VEGF濃度と血小板数は正の相関を示し,昨年度明らかにした血清VEGFの多くが血小板中に存在することをさらに裏付けた。(2)VEGFを産生するヒトglioblastomaを移植したヌードマウス(血清VEGF>3000pg/ml)とCrow-Fukase症候群患者の病理所見を比較検討した。剖検時,浮腫が著明で,臓器腫大は肝臓,脾臓,腎臓に見られた。肝臓ではSinusoidの著明な拡張と相対的肝細胞の減少が特徴的であった。脾臓では血管腔の著明な拡大,リンパ濾胞の減少,megakaryocyteの増加が,腎臓では糸球体の著明な腫大,糸球体内のcapillary拡大,sinusoid様に血管内皮細胞の増殖,Mesangium matrixの増殖が見られた。一方,その他の臓器には明らかな異常はなく,末梢神経系では一部に神経周膜下に軽度の浮腫が見られるのみで,軸索,髄鞘には異常を認めなかった。以上から高VEGF血症ヌードマウスの臓器病変は基本的にはCrow-Fukase症候群で見られる臓器病変と一致し,VEGFの病態への関与が確認されたが,末梢神経の病変には,VEGF以外のT細胞機能の関与が示唆された。(3)Crow-Fukase症候群患者の血清あるいは血漿中のmatrix metalloproteinase(MMP)を測定した。その結果,血清中のMMP-2,MMP-3,MMP-1,血漿中のMMP-9が有意に上昇していた。またGelatin zymographyではProMMP-2,ProMMP-9ともに有意に増加していた。MMPsはVEGFとともに血管新生,内皮細胞障害,内皮barrier機能を障害する事が報告されており,とくにCrow-Fukase症候群における末梢神経障害の発症に強く関与していることが考えられた。(4)本年度はtransgenic mouse作成のためのベクターの作成がほぼ終了し,次年度に作成予定である。
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