研究概要 |
(1)CFS患者の血清VEGF濃度と臨床症状:CFSあるいはその疑いとして,血清VEGFの測定を依頼された60例を対象とした.正常対照群男性の血清VEGFの結果から,血清VEGFが518pg/ml以上を有意な上昇として,VEGF高値群,低値群に分類し,記載されている臨床症状との関連を検討した.VEGF高値群は46例(男24,女22,年齢57±12歳),VEGF低値群12例(男8,女4,年齢66±11歳)であった.VEGF高値群の平均血清VEGF値は4758±3510pg/ml, VEGF低値群の平均血清VEGF値は160±l20pg/mlであった.VEGF高値群とVEGF低値群ではpolyneuropathy,臓器腫大,皮膚病変,血小板数で有意の差を認めた.M蛋白との関連は認めなかった.またCFSの6主要徴候の数が増加するに従い,血清VEGF濃度の上昇を認めた.以前より血清VEGFの起源は血小板であることを報告してきたが,今回の検討でも血小板数と血清VEGF値の間には有意な相関を認めた. (2)過剰VEGF産生ヌードマウスの末梢神経病変:昨年度作成した過剰VEGF産生ヌードマウスで,末梢神経病変を検索したが明らかな異常は認められなかった.このモデルでは血中VEGFは血小板中には蓄積されていず,末梢神経で病変を起こすほどの高いVEGF濃度が得られなかったものと考えられた. (3)naked VEGF DNAによる末梢神経障害の作成:VEGF発現ベクターに組み込んだhuman VEGF165 cDNAを筋注した大腿二頭筋では,軽度の浮腫が見られたが,末梢神経には異常は認められなかった.筋注したラットの血清VEGF濃度は測定感度以下であった. (4)過剰VEGFが血小板に特異的に発現するtransgenic mouseの作成を開始した.
|