研究概要 |
(1)アストロサイトの細胞障害発生時の細胞内へのNaイオン流入動態を中心に、Na/Caイオン交換系、電位依存性Caイオン・チャネルの果たす役割等を報告した(Takahashi et al.,2000)。 (2)オリゴデンドロサイトの虚血性細胞障害にカスパーゼー11の果たす役割(ノックアウト・マウス)、また汎カスパーゼ阻害作用を有するp35タンパクの発現による影響(Cre/loxPシステムによるオリゴデンドロサイト特異的p35発現マウス)を報告した(Shibata et al.,2000)。 (3)細胞内redox stateの指標となる3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide(MTT)還元の特性をラット培養type-1アストロサイト(以下A)とニューロン(以下N)において比較検討した(Soc Neurosci Abstr 26:1895,2000)。MTT還元反応は従来知られているとおり、ミトコンドリア機能に依存した細胞内redox stateの指標ではあるが、ミトコンドリア活性のみの反映ではなく、細胞質における解糖系の寄与が大きいことが明らかとなった。特にAにおいては解糖系のキー・エンザイイムGAPDHの阻害薬であるiodoacetateによりほぼ完全にMTT還元反応は抑制された。またNにおいては解糖系とともにTCA回路の寄与も無視できず、特にNにおいてはピルビン酸が特異的に作用しグルコース以上に反応に寄与することが判明した。 (4)MTT還元反応が細胞内エネルギー代謝の一般的指標となるかの確認の為、もう一つの蛍光redox indicatorであるAlamar Blueを用い検討した。MTTとは異なり、ミコトンドリア呼吸鎖のチトクロームCの直前で還元される特性を有し、より特異的にミトコンドリアの機能を反映すると考えられる。Alamar Blue還元にはピルビン酸の持つMTT還元反応に対する特異的な効果は認められず、これはMTT還元反応にのみ生じる現象と考えられ、さらに詳細を検討中である。
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