研究概要 |
ラミニン2欠損筋ジストロフィーとライ病における末梢神経髄鞘形成不全にはシュワン細胞のdystroglycan(DG)複合体が関与している.本研究ではDGの生物学的機能ならびにその不全が来す細胞機能障害を明らかにすべく免疫組織化学的,免疫生化学的,細胞生物学的,分子生物学的な手法を用いて解析した.結果:(1)DG複合体は末梢神経の髄鞘形成の時期に一致してシュワン細胞外膜に発現した.(2)シュワン細胞のDG複合体の発現は末梢神経の変性に伴って低下し再生に伴って再び増強した.(3)DG複合体を分解するマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性を発見した.このMMPはβDGの細胞外ドメインを切断することによりDG複合体を介する細胞内外の架橋構造を破壊した.(4)末梢神経の基底膜における新しいlaminin結合蛋白であるLBP30を同定した.またLBP30と相同性の高い蛋白がライ病菌の細胞壁に発現し宿主細胞への感染に重要な役割を果たしていることを見い出した.(5)DG複合体と相互作用するカヴェオラ蛋白caveolin-3の変異トランスジェニックマウスを作成,nNOS活性の異常を伴う筋ジストロフィーを呈することを見い出した.(6)ラミニン2欠損筋ジストロフィーの類縁疾患である福山型筋ジストロフィー(FCMD)の筋において分子量180kDaの細胞外基底膜蛋白p180が二次的に減少することを見い出した.神経系においてはp180はDG複合体と同様に脳表基底膜ならびに末梢神経内膜基底膜に強く発現しておりFCMDにおける神経障害との関連が示唆された.以上の結果は髄鞘形成不全に代表される神経系の障害にDG複合体が様々な形で関与しておりその修飾が発病防止に役立つ可能性を示唆している.
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