研究概要 |
Caveolinは細胞膜の特殊陥入部caveolaを構成する膜蛋白であり、種々のsignaling分子と結合し、シグナル伝達を調節する。1998年、caveolin-3遺伝子異常による常染色体優性肢帯型筋ジストロフィー(LGMD lC)の家系が報告された。われわれは筋ジストロフィーの発症におけるシグナル伝達系の役割を解明する目的で、ヒトcaveolin-3遺伝子L104Pミスセンス変異を導入したトランスジェニック(Tg)マウスを作製し、その病態解析を行った。Tgマウスは体重増加不良、筋萎縮、脊柱変形、歩行障害を示し、骨格筋病理ではミオパチー変化がみられた。変異caveolin-3 mRNAは過剰発現しており、caveolin-3タンパク欠損はdominant negative効果によることを明らかにした。caveolin-3は種々のシグナル伝達分子と結合しその活性を制御するが、NDP染色を用いた検討でTgマウス骨格筋ではnNOS活性が有意に上昇していることを見いだした。この結果は、過剰に産生されたNOが筋変性に関与し、nNOS活性抑制による筋ジストロフィー治療の可能性を示唆している。DNA arrayを用いてTgマウス骨格筋の遺伝子発現プロファイルを解析したところ発現上昇遺伝子として、c-Jun, ubiquitin conjugate E2β, G-protein-coupled receptor 25, laminin β2, defender against apoptotic cell death(dad-1)など8種類、発現低下遺伝子として、Glucocorticoid receptor form A, TNF receptor 1など4種類を同定した。中でも発現が増加しているdad-1にはERストレスに関連したアポトーシスを抑制する作用をもつことから、今後抗アポトーシス治療への応用の可能性が考えられる。
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